納音とはなにか、算出方法を三命通会を通して探っていこうと思います。
納音とはなにか、算出方法を三命通会を通して探っていこうと思います。
嘗觀《筆談》論六十甲子納音,本六十律旋相為宮法也。
凡氣始於東方而右行,音起於西方而左行,陰陽相錯而生變化。
嘗て『筆談』を観るに、六十甲子の納音を論じて曰く、本は六十律の旋相して宮と為るの法なり。
凡そ気は東方に始まりて右行し、音は西方に起こりて左行し、陰陽相錯して変化を生ず。
かつて『筆談』を見ると、六十甲子の納音について、
「その根本は、六十律が巡りながら順次『宮』となる仕組みである」
気は東方から始まって右へ巡り、
音は西方から始まって左へ巡り、
陰陽が交錯することで変化が生じる
三命通会は最初に、納音の根本は「六十律」と「旋相為宮」の仕組みであると論じ
三命通会は冒頭から、納音の「音」を六十律という音律の仕組みから説明しているんだね。
(五行大義と雰囲気がぜんぜん違う!)
所謂氣始於東方者,四時始於木,右行傳於火,火傳於土,土傳於金,金傳於水。
所謂音始於西方者,五音始於金,左旋傳於火,火傳於木,木傳於水,水傳於土。
所謂、気は東方に始まるとは、四時は木に始まり、右行して火に伝わり、火は土に伝わり、土は金に伝わり、金は水に伝わる。
所謂、音は西方に始まるとは、五音は金に始まり、左旋して火に伝わり、火は木に伝わり、木は水に伝わり、水は土に伝わる。
「気が東方から始まる」とは、
木 → 火 → 土 → 金 → 水という五行相生の順序。
一方、「音が西方から始まる」とは、五音は金に始まり、
金 → 火 → 木 → 水 → 土という別の巡り方をする、ということ。
(どこかで納音のスタートは「金」だっていうのをみかけて、出典どこだろ?と思ってたら三命通会だった…)
五音は金に始まる。
では、なぜ「金」なのでしょう?
ここから『三命通会』は、その理由を掘り下げていきます。
『三命通会』はまず
❖ 「気」の巡りと「音」の巡りは同じではない。
❖ 納音は、通常の五行相生だけでは説明できない。
❖ 音には音独自の巡り方がある。
納音與易納甲同法。乾納甲,坤納癸。始於乾而終於坤。
納音始於金,金乾也,終於土,土坤也。
五行之中惟有金鑄而為器,則音聲彰。納音所以先金。
《白虎通》曰:鍾兌音也
納音は『易』の納甲と法を同じくす。乾は甲を納め、坤は癸を納む。乾に始まりて坤に終わる。
納音は金に始まる。金は乾なり。土に終わる。土は坤なり。
五行の中、惟だ金のみ鋳て器と為せば、則ち音声彰る。納音の金を先にする所以なり。
『白虎通』に曰く、鍾は兌の音なり、と。
納音の方法は、*『易』の納甲と同じ法則による。
乾は甲を納め、坤は癸を納める。
そして、乾から始まり坤で終わる。
納音も同じように、金から始まり、土で終わる。
なぜなら、金は乾にあたり、土は坤にあたるからである。
さらに五行の中でも、金は鋳造して器物にすると音を発する。
だから納音では、金を最初に置く。
「なぜ納音は金から始まるの?」に対して『三命通会』は、二段構えで説明してる。
まず、
乾 → 金
坤 → 土として、乾から始まり坤で終わる
= 金から始まり土で終わるという『易』の納甲との対応。
さらに、金属は器に鋳ると音を発するという「音」そのものの性質まで持ってきた。
納音之法,同類娶妻,隔八生子,律呂相生之法也。
甲子,金之仲,同位娶乙丑,隔八下生壬申;
金之孟壬申,同位娶癸酉,隔八上生庚辰;
金之季庚辰,同位娶辛巳,隔八下生戊子。
納音の法は、同類、妻を娶り、八を隔てて子を生ず。律呂相生の法なり。
甲子は金の仲なり。同位にして乙丑を娶り、八を隔てて下りて壬申を生ず。
金の孟たる壬申は、同位にして癸酉を娶り、八を隔てて上りて庚辰を生ず。
金の季たる庚辰は、同位にして辛巳を娶り、八を隔てて下りて戊子を生ず。
……急に婚姻・出産モデル?!と思ったけど
これ、比喩っぽく見えて実際の並び方のルールを説明してる。
納音の方法では、同じ類のものが妻を娶り、八を隔てて次のものを生む。
これは律呂が互いに生じていく方法である。
そして実際には、
甲子 + 乙丑
↓
壬申 + 癸酉
↓
庚辰 + 辛巳
↓
戊子 + 己丑……
という順に展開していく。
言い方が急に結婚式っぽくなってるけど
例を見ると、
甲子 ↔ 乙丑
壬申 ↔ 癸酉
庚辰 ↔ 辛巳
と、隣り合う陰陽一対の干支を組にしている。
三命通会ではこれを、
同位娶乙丑
同位娶癸酉
同位娶辛巳
と表現している。
干支を二つ一組のペアとして扱う感じだね。
甲子から次に生まれるのが壬申。
六十甲子を順に見ると、
甲子
乙丑
丙寅
丁卯
戊辰
己巳
庚午
辛未
壬申
となる。
つまり甲子から数を進めて、八つ隔てた先に壬申が来る。
そこからさらに、壬申 → 庚辰 → 戊子と同じ法則で進んでいく。
甲子,金之仲,同位娶乙丑,隔八下生壬申;
金之孟壬申,同位娶癸酉,隔八上生庚辰;
金之季庚辰,同位娶辛巳,隔八下生戊子。
火之仲戊子,娶己丑,生丙申;
火之孟丙申,娶丁酉,生甲辰;
火之季甲辰,娶乙巳,生壬子。
木之仲如是左行,至於丁巳,中呂之宮。
五音一終,復自甲午金之仲,娶乙未,隔八生壬寅,一如甲子之法,終於癸亥。
甲子は金の仲、同位にして乙丑を娶り、八を隔てて下りて壬申を生ず
金の孟たる壬申は、同位にして癸酉を娶り、八を隔てて上りて庚辰を生ず
金の季たる庚辰は、同位にして辛巳を娶り、八を隔てて下りて戊子を生ず
火の仲たる戊子は己丑を娶り、丙申を生ず
火の孟たる丙申は丁酉を娶り、甲辰を生ず
火の季たる甲辰は乙巳を娶り、壬子を生ず
木の仲もまたこのように左行し、丁巳、中呂の宮に至る
五音ひとたび終われば、また甲午の金の仲より始まり、乙未を娶り、八を隔てて壬寅を生ず
すべて甲子の法と同じくして、癸亥に終わる
まず前半では、
金
甲子・乙丑
→ 壬申・癸酉
→ 庚辰・辛巳
その次に、
火
戊子・己丑
→ 丙申・丁酉
→ 甲辰・乙巳
そしてその次が、
木
壬子・癸丑
→ 庚申・辛酉
→ 戊辰・己巳
……と続いていく構造になってる。
つまり、金 → 火 → 木 → 水 → 土という五音の巡りが、
六十甲子の上で実際に展開されていて、一巡すると…
甲午・乙未
から再び金が始まる仕組み。
ここまでの要点
❖ 三命通会では、納音を二干支一組で扱う
❖ 一組から「隔八」によって次の組を生じさせる
❖ 五行はそれぞれ「仲→孟→季」の三段階を経て、次の五音へ移る
❖ 五音は金→火→木→水→土の順に展開する
❖ 五音が一巡すると、甲午・乙未から再び金が始まり、同じ法則が繰り返される
❖ これが「同類娶妻、隔八生子」という納音展開の基本ルール
ここまで「隔八下生」「隔八上生」と出てきましたが、
この「下生」「上生」とはナニモノ…?
自子至於巳為陽,故自黃鍾至於中呂皆下生。
自午至於亥為陰,故自林鍾至於應鍾皆上生。
夫上下生者,正謂天氣下降,地氣上升。
《易》曰:「天地交泰。」義見於此。
子より巳に至るまでは陽と為す。故に黄鍾より中呂に至るまでは、皆下生す
午より亥に至るまでは陰と為す。故に林鍾より応鍾に至るまでは、皆上生す
夫れ上下生とは、正に天気下降し、地気上昇するを謂う
『易』に曰く、「天地交わりて泰す」と。義ここに見ゆ
子から巳までは陽にあたる
そのため、黄鍾から中呂までの律は、すべて下生する
午から亥までは陰にあたる
そのため、林鍾から応鍾までの律は、すべて上生する
そして、この「下生・上生」とは、天の気は下降し
地の気は上昇する
という天地の動きを表している。
『易』の「天地が交わって泰となる」という考え方も、ここに現れているJAN!
ここまでの要点
❖ 子から巳までは陽とし、下生する
❖ 午から亥までは陰とし、上生する
❖ 下生は「天気下降」、上生は「地気上昇」という天地の動きに対応する
❖ 三命通会では、納音の展開を陰陽と天地の運行にも結びつけて説明している
ここまで、各五行は仲 → 孟 → 季という三段階で展開してきました。
では、なぜ三段階で止まるのでしょう?
然所生止三者,亦三元之義。
故經曰:三而成天,三而成地,三而成人。
易爻之象取三。
老子曰:一生二,二生三,三生萬物。
蓋有始有中有終畢矣。
然れども、生ずる所三に止まる者は、亦た三元の義なり
故に経に曰く、三にして天を成し、三にして地を成し、三にして人を成す
『易』の爻の象も三を取る
老子曰く、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず
蓋し始め有り、中有り、終わり有りて畢る
それぞれの五行が三段階で止まるのは、三元の考え方による
経には、
三によって天が成り
三によって地が成り
三によって人が成る
とあり
『易』の爻の象も「三」を取り、
『老子』にも、
一が二を生み
二が三を生み
三が万物を生む
(タロットカードの1,2,3にも通じるね。)
つまり、物事には始まり、中間、終わりという三つの段階があり、
そこで一つのまとまりが完成する、という考え方。
三命通会では、仲・孟・季が三つだから三段階!
なのではなく、その背後に
三元
天地人
始・中・終
という「三」で一つのまとまりを作る考え方をしている。
だから納音でも、一つの五行が
仲 → 孟 → 季
の三段階を経ると、そこでひと区切りとなり、次の五音へ移るんだね。
たとえば金なら、金之仲→ 金之孟→ 金之季で一まとまり。
その次に火へ移るという構造になっている。
でも、ちょっと待って?
始・中・終の三段階がある → だから納音も三段階
というところまでは分かる。
でも、ここでひとつ引っかかる。
一般的には、孟=はじめ
仲=なか
季=おわり
なので、順番だけ見れば孟 → 仲 → 季になりそうだけど
三命通会では、仲 → 孟 → 季の順で展開している。
……ん?👁️
一般的には、孟=はじめ
仲=なか
季=おわりなので、孟 → 仲 → 季と並びそうだよね。
ところが納音では、仲 → 孟 → 季になっている。
この理由は、三命通会が土台にしている夢渓筆談側にかなり明確に書かれていた。
五行先仲而後孟,孟而後季,此遁甲三元之紀也。
五行は仲を先にし、而して後に孟、孟の後に季とす。これ遁甲三元の紀なり
五行では、まず仲、次に孟、その次に季とする
これは*遁甲における三元の順序による。
仲 → 孟 → 季なのは、
「孟=始まり、仲=中、季=終わり」という
一般的な季節区分の順番を使っているからではなく、納音では、遁甲の三元の並び方を採用しているからだった…。(……そうなのか👁️)
ここでは遁甲の並び方を採用しているってだけで止めておくことに。
理由はおそらくあるんだろうけど、遁甲側の理論が出てくる(大きな横穴)ので掘らないでおきます😂
ここまで『三命通会』では、納音がどう巡り、どう展開するか?を見てきましたが、
次に出てくるのは、納音そのものがどう生じるか?です。
數之所合,變之所由出也。
乾為天,坤為地,乾坤合而為泰;
干為君,支為臣,干支合而納音生。
是故甲乙為君,子丑為臣,子丑甲乙合而為金。
数の合する所、変の由って出づる所なり
乾は天と為し、坤は地と為す
乾坤合して泰と為る
干は君と為し、支は臣と為す
干支合して納音生ず
是の故に、甲乙は君と為し、子丑は臣と為す
子丑と甲乙と合して金と為る
数が組み合わさるところから、変化が生じる
乾は天、坤は地であり、乾と坤が合わさることで「泰」となる
同じように、天干を君、地支を臣にたとえ、干と支が組み合わさることで納音が生まれる
と説明されていて、その例として、
甲・乙=君、子・丑=臣とし、甲子・乙丑という組み合わせによって金が生じるとしている。
つまり、干と支はそれぞれ単独で納音を決めるのではなく、両者が合することで納音が生じる。
甲は木だから、子は水だから、そこから金になる
みたいに、元の五行をそのまま足しているわけではない、ということ。
むしろ、天干と地支が組み合わさることで、そこに新しい関係が生じ、
その結果として納音五行が成立する💡という発想なんだね。
だから甲子・乙丑の場合も、甲乙だけ見ても金ではない、子丑だけ見ても金ではない
でも、甲乙+子丑という組み合わせによって「金」が生じると説明すると
最初に抱いた「庚辛も金、申酉も金なのに、なぜ木?」という疑問ともかなりつながってくる
納音は、干と支をそれぞれ単独で読む体系ではなく、
その組み合わせから生じる別の五行として扱われているということ(が、わかったぞっ!)
甲子・乙丑=金
庚申・辛酉=木
のように、納音五行そのものがどう生じるかは見えてきたと思う。
でも、まだ疑問が残る。(どんだけ掘れば気が済むの?この人…)
同じ「金」なのに、
海中金
金箔金
白蠟金
沙中金
剣鋒金
釵釧金
と、どうして名前が違うんだ?!
三命通会はここで、六十甲子を順に追いながら、
同じ五行でも「気の状態・位置・強弱・形・働き」が違うため、
異なる象を取ると説明していて、たとえば甲子・乙丑の海中金については…
甲子乙丑何以取象為海中之金?蓋氣在包藏,有名無形,猶人之在母腹也。
気がまだ包み込まれた状態にあり、名はあるが形はない
それは人が母胎の中にいるような状態である
だから、海中金という象を取る。
一方、甲午・乙未の沙中金になると、
氣已成,物質自堅實,混於沙而別於沙,居於火而煉於火
気はすでに形をなし、質も堅くなっている
砂に混じりながらも砂とは異なり、火の中で鍛えられるため、沙中金と呼ばれる。
同じ「金」でも、まだ形のない金、鉱石としての金、鍛えられる金
刃として働く金、装飾品として完成した金
のように、その金が今どんな状態にあるのかが違うんだね。
(いやーすごいっ。納音知ってる人からしたら当たり前のことかもしれないけど、全く知らなかった私はすご!ってなる😂)
三命通会では、納音を単なる五行の割り当てではなく、音律・陰陽・干支の組み合わせから生じる体系として説明して
納音は、干支に別の五行を貼り付けただけではなく、音律と陰陽の流れの中で組み立てられた体系だった〜!
コレを知らないと永遠に「金」なのになんで「木」なのよ…の疑問から抜け出せないところだった。
で、色々な算出方法や考え方はいくつかあったけど、実際の鑑定でこの通りに毎回計算はしないと思う…。
庚申だからまあ柘榴木だよね〜という感覚暗記みたいになりそうだね。(十二運のように。)
計算をしないけど、どうしてそうなるのか?納音の構造を知ることが出来たのは大きいと思います。
*『易』の納甲
納甲(なっこう)は、『易』の八卦に、十干や十二支を対応させる仕組みのこと。
たとえば、乾には甲、坤には癸……というように、卦に干支を「納める」ので納甲と呼ばれている。
---
*遁甲における三元
遁甲では、三元を仲=上元
孟=中元
季=下元として扱う。
地支では、
子・午・卯・酉=四仲
寅・申・巳・亥=四孟
辰・戌・丑・未=四季
に分け、この順序で三元を定める仕組みがある。
つまり納音の仲 → 孟 → 季という少し不思議な順番は、納音独自に作られたものではなく、
遁甲で使われていた三元配列をそのまま取り込んだものと見られる。